2012120日開催】

53回女性と組織の活性化研究会レポート

「不規則勤務職場での女性の職域拡大、ワーキングマザーの可能性!」



 人件費削減目的はもちろん、従業員のワークライフバランス実現のためにも、残業削減に取り組む企業は年々増加しています。とはいえ、「定時」でありながら、勤務が早朝や深夜に及ぶ業界も、間違いなく存在しています。そのような業界で働く、仕事と家庭の両立を望む女性は、職域を広げる権利をあらかじめ奪われて当然なのでしょうか?

 今回は、女性活躍推進に取り組む企業の中でも、とくに不規則勤務職場での女性の職域拡大をテーマに開催されました。



 今回の研究会も、下記の通り、2部構成で進行しました。



*第一部* 14:0015:45

   ・植田ミニ講義

   ・事例発表(質疑応答含む)

*第二部* 16:0017:00

   ・グループディスカッション



<主催者によるミニ講義>

 まずは恒例、事前アンケートをもとにした植田によるミニ講義です。



 今回のアンケートでは、実に90%の企業が「ワーキングマザーは増えている」と回答。出産が女性の退職理由となっていた時代は、とうに終わったことを実感させる数字です。ただ、未だにワーキングマザーの職域拡大に否定的な職場も13%と、案外多い印象。この数字を減らしていくことが、私たちの今後の課題であり、イキイキと働く女性をもっと増やすために大切なこととなっていくでしょう。



 「なぜ、女性の職域拡大が必要なのか?」

 その根本的な問いへの植田の答えは、「ずっと同じ仕事を続けることは、永遠に小学生でいるようなものだから」というもの。確かに、小学校から中学に上がるときは不安でドキドキします。でも、実際には小学校時代には味わえなかった経験ができるし、それを通して成長もできる。さらに、成長が自信につながり、学校に行くのが楽しくなる。職域が広がることは、これとまったく同じなのです。育児や介護などで、今後は労働人口の8割以上が、何らかの時間制約を持ちながら働くことになる世の中。それは、あくまで時間の制約であって、仕事の制約ではない。このことをすべての人が念頭に置いて制度を考えなければ、いずれ企業は立ちゆかなくなってしまうということを強く感じることができました。

職域が広がることに対しては、まだ歓迎ムードではない女性もいるかもしれませんが、これは「やる気のあるなしの差」ではなく、その人のおかれている状況による「気づきの差」であることが多いという植田の言葉には、うなずく参加者の方も多かったです。



<事例発表>

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)人事部男女共同参画グループ 中川晴美さん



 スムーズな運行を維持するために、現場で働く多くの人がシフト制による不規則勤務職場となる、旅客・運輸系業界。しかし、早朝や深夜の勤務は、ワーキングマザーにとってもっともハードルの高い職域のひとつ。ここで、女性活躍推進に尽力しているのが中川さんです。

 JR東日本さまは、国鉄時代からの長い歴史の中で、民営化された昭和62年の翌年に初めて大卒女性の採用をスタートさせたとあって、全従業員数に占める女性の割合が7.4%とまだまだ低め。初の女性運転士が誕生したのは、わずか十年ほど前のこと。この数字を20%までに引き上げるべく、JR東日本さまではさまざまな試みを行っています。それは、社会的背景もさることながら、今後10年以内に現役世代の4割が定年を迎える現実もあり、ワーキングマザーを含めた女性活用が必然の課題でもあるからだといいます。

 具体的には、2004年、「女性がその能力を最大限に発揮できる環境の整備」を目的に「Fプログラム」なる活動をスタート。さらに、女性のみならず、男女すべての従業員が主体的に関わることのできる「ワーク・ライフプログラム」(2009年)へと進化し、女性活躍の場の拡大に成果を上げ続けているそうです。

 とくに、不規則勤務職場における両立支援については、ベビーシッター割引券の配布や、短時間勤務と短日数勤務の併行、事業所内保育所の設置やシフト勤務の女性のための仮眠室を設けた駅を増やすなど、工夫を凝らしています。このあたりの取り組みは、運輸のみならう、ファストフードやコンビニエンス業界、シフト勤務で稼働する工場を持つメーカーなどでも参考になりそうです。

 中川さんのお話の中で興味深かったのは、不規則勤務もいとわない意欲の高い今どきの新卒女性に対し、国鉄時代からの男性社会の中で働いてきた管理職クラスの意識のギャップが大きいということ。男性社会の住人だから男尊女卑なのではなく、「女の子にこんな仕事をさせていいのだろうか」「女性は大切に扱わなければ」と意識しすぎるあまり、逆に若手の女性たちが経験するチャンスを(甘やかしによって)奪っているという現状でした。

 とはいえ、JR東日本さま全体では、9時〜18時、いわゆる一般企業の定時で終わる仕事は、なんと全体の約2%のみ。今後、育児と仕事を両立していく女性が圧倒的に増えることを想定すると、女性の職域拡大は必須の課題です。「まだまだ途上ではありますが」と中川さんはおっしゃいましたが、「ワーク・ライフプログラム」がその目標を達成したとき、多くの関連企業がそのノウハウを参考にすることは、おそらく間違いのないことだと感じることができました。

 中川さん、スライドを駆使してのわかりやすい発表をありがとうございました。

 

<グループディスカッション>

 主宰者の植田と事例発表をしていただいた中川さんを囲む2つのグループで、グループディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。

 JR東日本さまでは社内外に様々な形でロールモデルとなる社員の方々を紹介しています。

現在ロールモデル社員紹介の企画を検討中のある企業の方からは、インタビュー対象となる社員の方をどのように選んでいるのかについて質問がありました。これについて、JR東日本さまでは「女性初の新幹線運転士」など職場のパイオニア的な方や育児休暇を取得した男性社員など、社内でモデルとして紹介したい素敵な方にお願いしているとのことでした。その他のメンバーからも自社の取り組み紹介がありました。

 また、JR東日本さまの年次有給休暇取得率の高さ(なんと90%以上)には一同驚き。2ヶ月前に勤務日・休暇が決められてしまうため、個人が休みたい日(結婚式参列や家族のイベントなど)は有給休暇を活用することが当たり前となっているそうです。規則的に働いている多くの企業では、いまだに有給休暇を取得しにくい風土が残っているのが現状です。みなさんとても刺激を受けたようでした。



 2012年最初の研究会は、雪の降る中での開催となりましたが、参加者みなさんの熱気で外の寒さを忘れてしまいました。今年も活発な意見交換の場となることは間違いありません。

次回も多くのご参加をお待ちしております。

文責:阿部志穂、神田絵梨