【2012年6月18日(月)開催】第58回女性と組織の活性化研究会レポート
「現場の女性たちの本音(期待、悩み、不安)を知る」
女性活躍推進を実践する会社が増えているものの、本当に女性たちは活き活きと自分らしさを大切にして働いているのでしょうか?
実際には、働く女性たちは笑顔の下で様々な不安や悩みを抱えているのではないでしょうか?
今回は、会社の中の女性社員の現状と本音を取り上げていきます。
研究会は、下記の通り、2部構成で進行しました。
* 第1部*14:00〜15:30
・ 植田ミニ講義
・ 事例発表(質疑応答含む)
* 第2部*15:45〜17:00
・ グループディスカッション
*主催者によるミニ講義*
事前に集計した29社のアンケート回答をもとに、会社の中で働く女性たちの本音に迫りました。
「会社の女性たちは活き活きしていますか?」という質問に対して「個人差」と答えた企業が80%、また「女性たちは本音を出していますか?」という質問に対しては「個人差」と答えた企業が59%。そこから、女性が活き活きしているかどうか、本音を出しているかどうかは、会社側の要素ではなく、あくまで個人的な要素のような印象を受けました。
しかし、本当にそうなのでしょうか?アンケートの回答の中に「安心安全で本音を出せる場は少ない」という回答があったように、本音を語ることのリスクを感じてしまい本音が言えないという状況が多いのではないかと思いました。安心して本音を出すことができるアンケートや懇親会などでは、女性たちの本音がたくさん出てくることが多く、その中には女性活躍推進の取り組みに期待しているなどの肯定的な声が多くなっているようです。
会社としても、女性たち全員の本音を聞くためにセミナーや交流会など何かしら実行している会社が45%、計画中が17%と62%もの企業が女性たちの本音を理解する必要性を感じているようです。そこで出てきた女性たちの本音を踏まえて少しでも施策を行っている会社が34%、計画中が38%と72%もの会社がアクションを起こしています。
最後に植田のコメントの中に、「女性は皆、本音の自然体で生きたい、働きたいと思う。社員全員が本音の自然体で働けるとき、信頼と相互尊重の組織が実現され、組織は活性化するでしょう。」という言葉に共感しました。不安や期待のもやもやした気持ちを職場で伝えられたらどんなにいいだろう。そして、そんな心中をお互いに理解し合えたら、きっと上司や同僚たちとも共鳴し合えるプラスの組織になるのだろうと改めて感じました。
*プレゼンテーション*
今回は、雪印メグミルク株式会社 人事部 人材開発センター 担当課長 畑本二美さんに『女性活躍推進に対するヒアリングの効果』をテーマに事例を発表して頂きました。
雪印メグミルクでは、旧雪印乳業の時代である2006年から女性活躍支援取り組みを開始。スタート時から組織が改変された現在に至るまでヒアリングに力を入れられてきました。
雪印メグミルクになってからは、副主任以上の社員と女性を対象として男性1127名、女性482名をヒアリング対象として、平成23年6月28日から12月20日の間に26場所延べ61回に亘り女性が活躍していくための本音を畑本さんご自身とメンバーの木下さんのお二人でヒアリングしていきました。
実際にこれだけの社員の方々のヒアリングをしていくことは並大抵のことではありません。ヒアリングした後の報告書をまとめる作業が途方もない業務量になったり、そこまでしても説得力に欠ける部分があったりとデメリットもあるもの、生の声を聞くことで本音がポロッと出て現場でなければ気づきにくい課題が拾えたり、女性活躍推進に対する畑本さんと木下さんの想いも伝えることができたという、大きな大きなメリットを感じられたとのことです。
今回のヒアリングを通して、男性社員の本音から「女性活躍は男性のように働く女性を養成することなのか?」と畑本さん自身が自問自答し戸惑われたそうです。
しかし、そうではないことが女性社員の本音から分かりました。女性社員たちは出世が目標ではなく、男性並みのガンダム女性になるよりライフステージの変化に対応した働き方を望んでおり、それを上司が理解し関わっていくことで成長していく可能性がある!と希望の光が見えました。
女性活躍推進に対しての部門によっての意識の違いや女性社員自身の問題もあるものの、上司に女性社員たちの本音を理解してもらえるような何かしらのアクションを起こしていかなければと痛感されたようです。
そして、ヒアリングをした内容をもとに、女性の活躍を阻害している要因が能力発揮・スキル・モチベーションの3つの内容でまとめられることが明らかになり、それらの要因に対して打開策を掲げました。
能力が発揮できるようなチャンスを与える施策を実施し今後数年間は積極的にアプローチしていくこと、スキルの部分で機会平等を促進すること、女性社員自身の将来の不安を払拭させるためにライフステージの変化に対して対応するための制度を導入していくこと。制度に関しては導入するだけではなく、制度の理解を職場に推進したり、利用した場合のフォローも手厚くすることというように具体的なアクションプランを作成中です。
実際に多くの職場を訪問し、社員からヒアリングすることは実施する側も想像を絶する大変な労力です。しかし、その中で共感が生まれ現場を動かしていき、女性活躍推進の原動力になっていくということが畑本さんの事例発表から伝わってきました。
植田もコメントしていましたが、個別ヒアリングをしたことが素晴らしいということなのではなく、畑本さんと木下さんが自ら心を開いて受容と共感の気持ちで社員の方々と向き合ったからこそ、社員一人一人が「この人になら本音を話せる!」と信頼し本音を吐き出せたのでしょう。
何よりも畑本さん自身が入社当初はバリバリと男性並みに働くキャリアウーマンを目指していたわけではなく、出産・育児も経験している女性だからこそ、畑本さんの優しいお人柄により一層親しみやすさが加わり関わる社員の皆さんが心を開いていったのだと思いました。
本日は、とても貴重な事例を発表いただき、本当にありがとうございました!
*グループディスカッション*
主宰者の植田と雪印メグミルク木下さん、事例発表をしていただいた畑本さんを囲む2つのグループで、グループディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。
畑本さんを囲むグループでは、「そもそも女性が活躍している状態とは?会社は女性に
どのようなことを期待しているのか?」というテーマで議論が展開しました。畑本さんからは「トップが期待する女性活躍は、優秀な人に管理職になってもらい男性と同じように働いてもらうといったイメージになっているけれど、それは違うと思っている。能力発揮・モチベーション・スキルの3軸からすべての女性に活き活きと働いてもらえるよう支援したい」とのコメントがありました。男性からすると、まだ「女性活躍とは男性と同じように働くガンダム女になること」との意識があるようです。
また、雪印メグミルクさまの育児休職者復帰支援制度への質問も多く出ました。施策全般を通して私が印象に残ったのは、畑本さん・木下さんのきめ細かな応対です。例えば、3ヶ月に1回休職者に送付している雑誌に、季節の挨拶等を入れたお手紙を同封したり、復帰前に義務付けている上司面談にあたり、お互いに確認が必要なことを面談でもれなくスムーズに話せるようチェックリストを用意したりと、女性らしい気配りと「あなたの復帰を待っています」という思いが詰まっていて素敵だと思いました。
次回の研究会は、「メンタリング風土の醸成」と題して7月30日(月)に開催いたします。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。
(文責:キャリアコンサルタント 川村貴子、株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨)