2012730日(月)】第59回女性と組織の活性化研究会レポート

『メンタリング風土の醸成の5年間』



 最近、メンター制度やメンタリングに関心を持つ企業が増えてきているようです。

今回の研究会では1929名(オブザーバー含む)の方が参加し、先行取り組み企業からメンタリング風土醸成のヒントを得ようと、本音ベースの熱い議論が展開されました。

 研究会は、下記のとおり、2部構成で進行しました。



*1* 14001530

・植田ミニ講義

・事例発表(質疑応答含む)

*2* 15451700

・グループディスカッション

 以下、今回の研究会の内容について、それぞれ一部分をご紹介します。



*主宰者によるミニ講義*

事前に集計した32社のアンケート回答では、メンタリング風土があると回答した企業は60%でした(ある 13%、少しある 46%)。メンタリング(または同様の)制度を現在実施している企業は38%で、今回の回答では対象者が新入社員のところが多く見られました。一方で、メンターが必要な人達は?との問いに、多いのか少ないのかわからないと回答した企業が半数に上り、「自分には必要ない」と思っている人がいるという回答やメンタリングに対する理解不足から希望者がいないとの声もありました。

社内でメンターの役割をしている人がどれくらいいるかとの問いに、半数は少ないと感じており(やや少ない 16%、少ない 38%)、「わからない」も34%に上りました。

長い不況で何となく閉塞感が続く中で、みな自分のことで手一杯になりがちで、公的に役割として与えられないとやりたがらない人が多いようです。

 メンタリングやメンターについての理解が足りない場合、メンターを任されることが

「単なる業務量増加」とネガティブに捉えてしまうことがあるようですが、実際は「メンターを経験することで自身が成長する」という大きな効果があります。メンターのサポートによって成長したメンティが、やがてメンターとなり新たなメンティの成長を促す―このようにメンタリングチェーンができると風土になります。

はじめは制度として取り組んだメンタリングがやがて風土となり、働く全ての社員が「人を育てる」意識を自然と持てる組織になることを目指して、企業内でメンタリングに取り組むことが大切だと感じました。




*プレゼンテーション*

 今回は、ロート製薬株式会社 人事部 山本さんと生産事業本部人材開発グループ 奥田さんの2名より、『メンタリング風土の醸成』をテーマに事例発表をしていただきました。

 まずロート製薬さまの基本情報ですが、従業員数は単体で約1,500名、そのうち正社員は850名、男女比は55という企業です。社内ではロートネームで呼び合うことがルールになっており、自分が呼んでもらいたい名前を申告してネームプレート等に記載しています。また、生のコミュニケーションを大切にする「ナマコミ制度」があり、

朝の20分はメール禁止という面白い取り組みをされています。

全社イベントも活発に行っており、先日土曜日に開催された運動会には、自由参加にも関わらず1,300名の方が参加されたそうです。その他、社員の誕生日には「社員が思いきり働けるのは家族のお陰」との感謝を込めて、会社からホールケーキが贈られるそうで、そこで働く人ももちろん家族までも大切に思う、アットホームで素敵な会社です。

 さて、ロート製薬さまのメンタリング制度についてご紹介します。

メンタリングを受ける対象のメンティは入社2年目の方で、メンターはメンティからの指名で決定します。メンターに選ばれるのは兄貴・姉御肌でちゃんと仕事もできる人が多いようです。メンタリングの期間は1年間、12ヶ月に1回の頻度で就業時間内に面談をすることになっています。面談の設定や面談時のテーマはメンティが発信、話すテーマは基本的に仕事のことにしているそうです。人事への報告は、メンティ側から面談実施の連絡のみで、話した内容は聞いていないとのことでした。

制度を5年間続けてきたことで、初期にメンティだった方が今ではメンターに選ばれる立場になっていたり、「メンターに選ばれることが誉れ」という意識が浸透してきているようで、着実にメンタリング風土が醸成されてきていることがうかがえました。

 メンティがメンターを指名することについて、入社2年目だと身近な人しか思い浮かばないのでは?と思いますが、ロート製薬さまではイベント等を通じて全社員が顔を合わせる機会が多いため、顔見知りが多く、部署を越えて指名することも可能なのだとか。

お話を聞いていると、ロート製薬さまが制度導入前から温かい雰囲気の会社だからこそ、メンタリング制度もスムーズに受け容れられたように感じました。

 事例発表の後半では、発表者の山本さんが主宰しているママ会のお話もしていただきました。ランチを食べながら、新米ママに対してベテランママがアドバイスをする非公式のコミュニティで、ここではベテランママがメンターの役割を担っているようです。

 現在メンタリング制度を導入中の企業もこれから導入検討の企業にも、参考になる要素がたくさんあったと思います。

山本さん、奥田さん、素晴らしい事例発表をありがとうございました。





 


    グループディスカッション*

 後半のグループディスカッションは、事例発表をしていただいた山本さんを囲むグループと、主催者の植田と奥田さんを囲むグループと2つに分かれて行われました。ロート製薬さまのメンティは入社2年目が対象でしたが、他にも新入社員を対象とする企業、女性リーダーを対象とする企業、女性営業を対象とする企業等、多様な取り組みが行われておりました。

メンタリング制度の導入を計画している企業からは、「効果測定」の必要性、また、導入するにあたり何かしら「数値での報告」を求められるのではないか、という質問が投げかけられました。メンタリング制度の効果を数値で表すのは難しく、多くは離職率の低減とアンケートによる報告とのことでした。また、メンタリング制度を導入したいがメンターにふさわしい人材が不足しているという悩みもあり、メンターの育成も大きな課題となっているようです。

メンター育成の必要性から、チューターとの違い、女性管理職のロールモデル不足等、ディスカッションはどんどん深まっていきました。女性リーダーがメンティの場合、男性管理職がメンターになるケースがほとんどです。女性が企業の中で昇進やキャリアアップを実現しようとすれば、様々な障害が存在します。そんな時に、「あなたは大丈夫だから、頑張りなさい」と側面支援して背中を押してくれるのがメンター、男性管理職の方が女性の悩みをどこまで理解して、受け止めていけるのかが鍵になっているようです。

メンター制度の導入に躊躇している場合は、山本さんが主催している「ママ会」のように、強制的ではなく自主的に集まって、「本音を言い合える場を設ける」ことに賛同する担当者も数多くいらっしゃいました。



次回の東京研究会は、事例発表者に株式会社常口アトム 女性活躍推進部部長 佐藤裕美さんを迎え、「次世代のために女性がリードする女性活躍推進!」と題し、94日(火)に開催します。たくさんのみなさまのお越しをお待ちしております。





 




 

文責:株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨 キャリアコンサルタント 山岡正子