201294日(火) 

60回女性と組織の活性化研究会レポート



「次世代のために女性がリードする、女性活躍推進!」



*第一部* 14:0015:30

  ・植田ミニ講義

  ・事例発表(質疑応答含む)

*第二部* 15:4517:00

  ・グループディスカッション



<第一部>

 今回のアンケートでは、女性活躍推進やダイバーシティを推進する中心部署やキーパーソンについて、また、その体制がうまくいっているかといった項目を中心に伺い、32企業から回答をいただきました。

 数年前に比べ、多くの企業で推進への積極性が高まり、活動自体も社員に認知されるようになってきているという結果となり、企業における女性の活躍度アップ、ダイバーシティの浸透に明るい兆しがハッキリと見えてきています。

 しかし、いわゆる「男社会」とされていた業界では、推進の必要性を感じていても、そもそも「男性上司が女性部下をどう扱っていいのかわからない」といった問題を抱えている企業もまだ多いのが現実です。

 そんな状況を改善するために、「男社会」の代表格ともいえる不動産業界で女性による女性のための環境改善に奔走する(株)常口アトム 女性活躍推進部部長の佐藤裕美さんに、これまでの施策の軌跡を報告していただきました。



 植田のミニ講義のあとに登場した佐藤さんは、まず、ライフラインチャートを使って、不動産業界で歩んできたこれまでの道のりを説明。企業人として、母としての紆余曲折をオープンに語っていただいたことで、現在、社内で唯一の部長職となった彼女の立ち位置が明確になりました。

 常口アトムさまは北海道エリアでシェアナンバー1の不動産会社。特に仲介件数は5万件を超え、全国でも7位の実績を誇ります。しかし、社員の女性比率は17.8%、管理職に至っては9%と低く、女性の勤続年数も短いことが近年の課題でした。女性たちが退職する最大の理由は「激務」。ですが、不動産屋さんを訪れるお客さまは、男性ばかりではありません。女性だって、部屋も借りればマンションも購入します。そんな女性客に対して、親身なアドバイスをし、成約に結びつけることができるのはやはり女性です。実際、女性従業員がいる店舗は、男性ばかりの店舗に比べて、女性の来客率が高いというデータもあるそうです。

 そこで、常口アトムでさまは、女性活躍推進策というより、まずはCS戦略の一環として、201012月にハートフル・プロジェクトをスタート。女性客に優しいイメージを前面に打ち出すことで、同業他社との差別化を図るというミッションの元、女性従業員が活躍できるフィールドの開拓に着手しました。さらに、1年後の2011年9月には、女性の人材育成を目的とした女性活躍推進部を設立。佐藤さんが部長として抜擢されました。

 女性が活躍する下地のない社内で、まったくゼロからの出発となった女性活躍推進部。女子部会を催すなど、活動は草の根的なところから始まりましたが、それでも、各店舗に1人いるかいないかという状況で孤独感を抱えていた女性社員たちが、みるみる意欲的になっていくのがわかったそうです。最初は17名だけの参加だった女子部会は、回を重ねるごとに参加者が増え、今では40人超の勢い。そして、特筆すべきことに、退職する女性が激減したのだとか。やはり、女性は共感する性。悩みを共有しあえる存在がいるだけで、どんどん前向きになれるのですね。最近では、各店舗の店長から「うちの店の女性も参加させて欲しい」とリクエストされるまでになっているそうです。

 他にも、女性客への情報発信基地となる「L-desk」の設置で社内・社外の女性のライフスタイルを共に応援したり、マナー研修の開催で社内全体の接客スキルをボトムアップするなどの活動も。

 このようにして、女性社員の活躍の場を広げることが顧客満足度アップにつながると証明することで、社内の大多数を占める男性たちの理解と協力を引き出していきました。

 「今後も活動を続けながら、女性社員比率のアップ、女性役職者の増加を目指し、男女問わず、イキイキとした社員でいっぱいの組織作りをおこなって行きたい」と夢を語る佐藤さん。この日、参加したみなさんの心を打ったのは、彼女をはじめとしたメンバー全員の学びに対する真摯な姿勢でした。社外研修に次々と参加し、キャリアコンサルタントなどさまざまな資格取得にも挑戦。そこで得たことを惜しみなく社内にフィードバックし、社員を啓発していくというポジティブなループが、短期間で組織の風土を大きく変えた一番の要因であることは間違いありません。

 組織は制度ではなく、人の情熱によって変わっていくのだということを体現した佐藤さんの発表には、惜しみない拍手が送られました。素晴らしい発表を、本当にありがとうございました!



*グループディスカッション*



主宰者の植田と事例発表をしていただいた佐藤さんを囲む2つのグループで、グループディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。

 前半では、「女性が働きやすい環境」について議論が展開しました。常口アトムさまでは、今まで子どもを産んだ女性はみんな辞めてしまっているそうです。その理由として、職場の労働環境が大きく影響していたようです。長時間労働や各店舗に女性が少ないことによるロールモデルの不在など、女性にとっては働き続けにくい環境とのことでした。最近では女性の新卒採用者も増えているようですし、結婚・出産といったライフイベントを迎える女性が増えていきます。女性が働き続けるためにどう支援するかという問いに、「初めから制度を作りこまない方がいい」「今後子どもができて働き続けたいという人が出てきたら、その人にあわせて一緒に施策を考えていくくらいの柔軟性が必要」といった意見が出ていました。

 もう一方のグループでも「働き続けてほしい女性社員」に対する取り組みに関するディスカッションが行われました。オフィスワーク職に比べて退職率が高い女性営業職のネックは、長時間労働と売り上げに対するストレスが要因となっていますが、時代の流れと共に男性管理職の考え方も変化しつつあり、改善の兆しが見えてきたようにも感じました。また、「産休、育休からの職場復帰」もいくつかの問題点を抱えており、「男性社員よりも厳しい女性社員の視線に遠慮しながら働く復帰ママ」、という状況もあるようです。産休に入る前と復職直前にセミナーを行う企業もあり、復職の心構えを共有すると共に、同じ環境を経験した先輩社員のアドバイスを聞いて、今までとは少し違った働き方にならざるを得ないことを、復職するママ社員自信が受け入れる準備をできるように支援しているようです。



 次回の研究会は、「異業種交流研修で体感するダイバーシティ」と題して1010日(水)に開催いたします。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。



                       文責:阿部志穂  神田絵梨  山岡正子