【第68回】女性と組織の活性化研究会レポート

「女性達がボトムアップで楽しくリードするから広がる女性活躍推進」

今回は、参加者の3分の1が初参加というフレッシュな顔ぶれでの開催となりました。
最近は女性活躍推進・ダイバーシティ推進という企業の取り組みもだいぶ広まってきましたが、第68回の研究会では、実際に企業の中で女性活躍推進の取り組みを始めてからどのような変化があったのかにフォーカスを当てていきました。結果として、女性活躍推進の必要性がどこから上がってきたのかによっても違うようです。

そして今回は、ボトムアップから始まった女性活躍推進の現状をキユーピー株式会社 五霞工場 総務課の市村友紀さんに事例発表して頂きました。

 


研究会は、下記の通り、2部構成で進行しました。

     1部*14001530

     植田ミニ講義

     事例発表(質疑応答含む)

     2部*15451700

     グループディスカッション

 


以下、今回の研究会の内容をご紹介します。

 


*主催者によるミニ講義*

 今回は、28社から回答いただきました。

 女性活躍推進の進め方について、トップダウンが25%、ボトムアップが29%、専門部署主導が35%と想像以上にボトムアップで進めている企業が多いことに驚きました。そして、女性活躍推進をリードしているキーパーソンは社長や取締役・担当管理職が10%前後であるのに対し、担当者(達)が50%を占めています。それだけに、社長や取締役・担当管理職以外のキーパーソン(達)の女性活躍推進に対してのモチベーションは高いようです。女性活躍推進については、トップダウンだからといって大きな影響力を持ち、共感・賛同する社員が多くなるということでもないようです。やはり、女性活躍推進の必要性を心底感じているキーパーソン(達)であればあるほど、共感・賛同する社員は増え、大きな影響力になっていくのでしょう。

 しかし、その反面意外だったのは、女性活躍推進で女性たちの意見が意外と反映されていないということです(少しされている36%、反映があまりされていない15%、されていない4%、わからない15%)。実際には、女性の中でも、もっと活躍したいと思う人と、そう思わない人が二極化しているのではないかと私は感じています。

 植田のコメントの中で、「何かをすることは手段の一つ。組織の社風を変えていくことが大切。」だということがとても印象に残りました。経営トップと、本気で女性活躍推進を願う人たちがキーパーソンとなり、巧みなコンビネーションで継続し推進していくことが本当に女性がイキイキと活躍していける社風を作っていくんだと感じました。

 


*プレゼンテーション*

今回は、キユーピー株式会社 五霞工場 総務課の市村友紀さんに〜ボトムアップだから広がるダイバーシティの輪〜というテーマで発表頂きました。

ちなみに五霞工場はキユーピー株式会社の5番目の工場として茨城県猿島郡五霞町に1972年に設立されました。ほとんどの女性社員は地域社員という転勤を伴わない雇用形態であり、全国転勤がある総合職になると女性社員の割合は7.7%とぐっと少なくなり、女性管理職もまだまだ多くはないようです。

昨年の市村さんの発表の際もご紹介しましたが、キユーピー株式会社での女性活躍推進の発端は、社内公募の論文で市村さんが400字詰め原稿用紙40枚にも及ぶ『子を産み育てることを共に喜びあえる会社になるために』というテーマで提出したことです。1年に1度会社を良くしていくために社員から提言をしてもらおうという目的で始められた社内公募のようですが、その中で市村さんの論文が経営陣の目にとまり、市村さんがリーダーとなりプロジェクトとして始動していきます。プロジェクト名は「仕事においても家庭でも輝きながら楽しんで、様々な価値観の違うメンバーが能力をフルに発揮できる!」という強い願いから『輝楽輝楽COLORフル(キラキラカラフル)プロジェクト』に決定。全国の事業所の中から事業所長に推薦されたメンバー(女性10名)によって「キユーピーは女性にとって本当に働きやすい会社?」「女性社員が能力を発揮するためには何が問題か?」などを考え、提案内容を思考錯誤しながらまとめあげていきました。

そして、男性の経営陣の心に響く言葉とは何か?を考え、『私たちはもっと輝けるんです!「目的:お客様にもっと親しまれる素敵なキユーピーを創る!」』ということを掲げ、それを実行するために3つの具体的提案内容を提示し活動が始動しました。

 活動を進めていく中で、年々時間的・身体的制約者が増加している傾向に気づき、女性だけではなく、障害者や介護者などにもフォーカスし、ダイバーシティの輪を広げていきます。

ボトムアップから始まった現在の活動から、会社全体にもその影響は出ているようです。会社としては中期経営計画の中に「多様な人材の活躍」が組み込まれ、実際に女性活躍推進に取り組む部門が増えました。また、生産本部では5名の女性管理職が誕生し、一般職であっても工場内での異動が盛んになったそうです。そして、何よりも素晴らしいのは、活動の推進メンバー自身がダイバーシティを理解し、主体性を持つように意識が変化してきたということです。新たな気づきとともに新たな力も身につけたとのこと!!

最近の取り組みとして、中河原工場『はぐくみキッチン』・伊丹工場『あいさつ運動』・五霞工場『ママランチミーティング』などがある中で、中河原工場『はぐくみキッチン』の事例を並木さんが発表してくださいました。一つの製造ラインを育休復帰者のみで担当し、周囲への気遣いや遠慮から解放されてモチベーションを高く持って働けるラインという画期的な取り組みです。この取り組みに対しては、研究会に参加された多くの方々から質問が投げかけられ、関心の強さを物語っていました。

市村様、並木様、貴重な事例を発表いただき、ありがとうございました。


*グループディスカッション*

 市村さんとキューピー人事部のみなさん、並木さんと植田を囲む2つのグループに分かれ、事務局メンバーも加わってのディスカッションを行いました。

 


 普段、植田の入るグループは、発表者の方への質疑応答が軽く行われた後、ミニ講義の続きのような雰囲気で、植田の考えるダイバーシティ像やさまざまな企業の最新事例などに、参加者のみなさんが耳を傾けようとすることが多いのですが、今回は事例発表者である並木さんへの質問が、前半も後半も時間いっぱいまで途切れることがありませんでした。

 みなさん、ご自身の会社の取り組みと照らし合わせながらさまざまな確度から質問をされていましたが、やはり、一番の関心事は、勤続20年以上の女性が1人しかいない、離職率がとても高かった工場で、「なぜ数年足らずの取り組みで、多くの女性たちの意識を変えることができたのか?」ということでした。

 並木さんからの回答の主旨を要約すると、ひとつには、ママランチ会に工場長が参加して女性従業員に期待していることを話してもらうなどしたことで、「自分たちが期待されていること」「退社ではなく育休復帰を選ぶことの大切さ」を実感した人が多かったこと、そして、ふたつ目にして最大の原因は、育休取得予定者や育休復帰者に対し、制度の説明に終始せず、「それで、あなたはどうしたいのか?」「希望を叶えるための準備は自身でどこまでやれているのか?」といった点にも踏み込んで対話し、1人ひとりにキャリアへの“当事者意識”を芽生えさせたことだったようです。

 また、プロジェクトの前段階として、2003年よりスタートした社内の改善活動「夢多゛採」(むだとりと読みます)が広く浸透していたことで、問題をキャッチアップする力や変化を受け入れる柔軟性を持つ従業員が増えたことも素地としては大きかったとのこと。

 実際にはまだまだロールモデルが少なく、各工場とも変化の途上にあるキューピーさんですが、女性が働き続けられる土壌が整った後は、働き続けることで感じられる幸せのカタチを深化させることがさらなる課題だと話してくれました。

 また1年後、ぜひ報告を伺いたいですね。

 

 市村さんを囲むグループでは、事例発表の内容をさらに掘り下げて議論する形で、たくさんの質問が飛び交いました。

いくつかの例を紹介すると、まず、新規プロジェクト等について提案できる機会がどの程度あるのかという質問がありました。この質問に対しては、キューピーさまでは、市村さんがダイバーシティに関するプロジェクトを担当するきっかけとなった社内論文制度のほかにも、いくつか新規のプロジェクト等について提案できる機会があること、また、意見をいいやすい風土あることなどのお話がありました。

次に、キューピーさまの男性育児休業取得者数がほかの参加企業さまと比べて高いことに関連して、男性の出席者からは、どうしたら男性が育児休業を取得しやすい環境になるかという質問が出されました。これに対しては、人事担当のかたが育児休業制度について説明してくださったのですが、キューピーさまでは、育児休業期間が8週間以内の場合、最初の10日間が有給として取得できるということでした。「有給としての育児休業」とすることで、育児休業が取りやすい環境につながっているのではないかとのことでした。男性の育児休業の取得について課題を抱えている企業さまが多いなか、メンバーのみなさまは大変興味深くお話を聞いていらっしゃいました。

さらに、「輝楽輝楽COLOR(キラキラカラフル)フルプロジェクト」、「ダイバーシティ推進チーム」における取組みを通じて一番何が変わったかについて質問がありました。キューピーさまでは、取組みを始める以前から、会社としてダイバーシティに関連する制度は整っていたけれど、実践面において、制度を取得しやすい風土が浸透していなかったということでした。しかし、ダイバーシティの取組みを進めることで、従来の風土が変わり、制度を取得しやすい風土をつくることができたということでした。

グループディスカッションを通して特に印象的だったことは、キューピーさまのダイバーシティ推進では、制度取得者である当事者に主体的に考えさせることを大切にしている点です。たとえば、産休・育休取得者に対しては、今後の自分のキャリアについて、家族と話してもらい、当事者自身に主体的に考えてもらいます。そうすることで、仕事に対して真摯に考え、やりがいをもって将来のキャリアビジョンがみえる人が増えてきたとのことでした。ダイバーシティの取組みでは、会社が与え、当事者はその権利を行使するという考えかたが大勢を占めるなか、このようなキューピーさまの考えかたは、ダイバーシティを浸透させていくうえで、大変参考になると思いました。

最後に、課題としては、2011年9月〜12月の3カ月限定での活動「輝楽輝楽COLOR(キラキラカラフル)フルプロジェクト」、2012年1月〜12月に展開された「ダイバーシティ推進チーム」と順調に進んできたダイバーシティの動きが、本部主体になってから鈍ってしまっているとのお話がありました。今後、どのようにこの課題に立ち向かっていかれるのか、今後の取組み等も含め、またぜひ研究会の場で発表していただきたいと思います。


 次回の研究会は、「女性執行委員が奮闘する労働組合女性活躍推進の課題と未来」と題して618日(火)に開催いたします。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。

文責:川村貴子、阿部志穂、舟山綾