20131127日(水)開催 第73 女性と組織の活性化研究会レポート

「シニアの活力の再生〜65歳定年時代の人材マネージメント〜」

 

73回目となる研究会のテーマは「シニアの活力の再生 65歳定年時代の人材マネージメント〜」。60歳を超えても働き続ける方が増える中、活き活きした組織をつくるためには、女性はもちろんのこと、シニアのみなさんの意欲を高めることも欠かせません。そこで今回は、ゲストに組織開発コンサルタント・プロセスファシリテーターの加藤雅則さんをお招きし、加藤さんが関わっておられる事例のお話をお聞きしつつ、参加者全員で「シニア層の活性化」について考え合いました。

 

当日は1823名の方々にお集まりいただき、(1)植田によるミニ講義、(2)加藤氏のミニ講義、(3)グループディスカッション 3部構成で進行しました。以下、内容を簡単に紹介させていただきます。

 

植田によるミニ講義

 

 まずはじめに、ファシリテーターの植田より、会員の皆様にご協力いただいた事前アンケートのまとめについて解説しました。アンケートによると、自社において50代以上の社員は「だんだん増えてきて」おり、60歳を超えるとほとんどが「定年後の再雇用」になるとのこと。また、約半数の組織が「役職定年制度を設けている」とのことで、キャリアプラン・ライフプラン等のセミナーを行っているものの、9割以上の組織が、彼らのモチベーションや働き方などについて「何らかの悩み・問題・課題等を抱えている」との回答結果となりました。

 

 その後、植田がパワーポイントのスライドを使いながら、シニア活性化のポイントについて説明しました。まず大前提として、2000年までの「オールドキャリア時代」は55歳が定年で、かつそれまで年功序列で給与も上がり続けるのが当たり前でしたが、今は大企業であってもいつ潰れるかわからないような、何があってもおかしくない時代。だからこそ、若いうちに一生懸命働いて、後から「ぶら下がる」のではなく、「生涯現役」として自己研鑚を続けながら、会社・組織に必要とされる働き方を目指す必要がある、ということは、押さえなければならないポイントです。

 

 植田がシニア層の研修で関わった事例は、某企業の「役職定年者研修」。3年続けて指導しましたが、彼らは「企業戦士」としての自負・プライドがあり、他者と信頼関係で結ばれるためのコミュニケーションが苦手な方が多かったとのこと。そんな彼らの活性化のポイントは「新たな人生観に気づくチャンスを与え、与え続けること」。40代の時期から「残りの人生をどう生きるか」を考えるきっかけを提供し、夢を持って自分の人生を自分で切り拓こうという意欲を持つこと、また周囲のメンバーと良好なコミュニケーションを取りながら後進を育てること、そして残りの人生を上手に「下る」ために手放すものを決めること、などが大切な視点であるとお伝えしました。

 

加藤氏によるミニ講義

 

 その後、ゲストの加藤雅則さんより「シニア層活性化『新しい役割発見に向けての自己ストーリーづくり』」をテーマにご講義いただきました。

 

まず、加藤氏が日々実践されている研修・組織開発の概要について簡単にご説明いただいた後、あるメーカー企業で携わった研修事例についてお話しいただきました。その研修の受講対象者は、50歳以上の研究者20名。目的は「若手への技術伝承」。しかしこれは表のテーマであり、裏のテーマは、彼らの「新しい役割の発見を支援する」だったそうです。ただ「後進に技術を伝えてください」と言っても、当事者であるシニア層の方々にとってはどうやっても他人事。そこで、技術伝承を「自分ごと化」し、シニアとして働くうえでの役割・期待を認識するための場づくりを行われたそうです。

 

 その場づくりで工夫されたことは「違う世代の声を伝えること」。下の世代の方々が受ける研修で出てきた声をシニア層の方々にぶつけたり、上司から受講者個人宛に手紙を書いてもらうなどし、「自分たちは他の世代からどう思われているのか、どんな役割を期待されているのか」を考えるきっかけをつくったそう。最初は「何を今さら…」「何で俺が…」「もう楽したい…」などの否定的な意見が出てきたそうですが、少しずつ「もういちど基礎研究がやりたい」「また薬を上梓したい」「自分が磨いてきた技術を下に伝えたい」といった本音が聞かれるようになったそうです。

 

 この事例を通じて加藤さんが気づいたのは「周囲からの期待に気づいていないシニア層が想像以上に多いこと」。プロジェクト型の仕事が中心となり、組織の「縦のライン」が崩れ、そもそも上司や同僚と話ができず、変な遠慮や想像不安を抱えている方が多かったそう。これからの課題は、当事者だけでなく、その周囲も巻き込んで「いかに本音で語り合える場をつくるか」がカギになると言えそうです。

 

 また、最後に少しだけ、加藤さんと植田によるパネルディスカッションも実施。普段から「コーチ」「クライアント」として10年以上の関わりを持つ二人。ここでも、とても息の合った対話が繰り広げられました。

 

 短い時間の中でたくさんの話題が出ましたが、筆者が特に印象に残っているのは「いかにシニア層の男性に心を開いてもらうか」の話。

 

加藤さん曰く「研修講師として受講者と接すると『自分と講師とどちらが優れているか』といった視点で見られがち。正面からぶつかっていくとすぐ争いになる。必要なのか『合気道』の考え方。相手の力をうまく使って投げたり受け流したりする。そういうアプローチをうまく使うようにしている」とのこと。植田も「自分自身が50代になって、ようやくシニア層の男性を教えやすくなったと感じる。上から目線で教えようとするのはダメで、同じ目線で、そっと背中を押すように働きかけることで、はじめて彼らの心が動くと思う」と語り、二人の実体験を踏まえた教訓に、会場のみなさんもたくさんの方が頷いておられました。

*グループディスカッション*

 

主宰者の植田、今回のゲスト加藤さんを囲む2つのグループで、グループディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。

 植田の入ったグループでは、シニア社員向けにセミナーを実施したことのある企業数社の取り組みを共有しました。人事制度に関わる「ここだけの話」が多かったため、詳細は記載することを控えさせていただきます。各社共通していたのは、セミナーで退職金の話や、定年後再雇用の場合の給与体系の話など、お金に関することをきちんと説明していた点です。シニア世代の関心が高いのもやはりお金のようで、セミナー参加者の満足度は高かったようです。

 後半は、50代社員のモチベーションについて意見が交わされました。モチベーションの低い人は「働きがい」を見失ってしまっている、どんな風に気づかせたらよいかとの問いに、加藤さんから「気づかせるのではなく、本人が気づく場を作ることが大切」とのコメントがありました。

この「社員のモチベーションを高める」というテーマへの取り組みは、現状、企業の人事部門主導で行うより、労働組合主導で取り組む方が進めやすい印象を受けました。

  

 次回の研究会は、2013年の総会です。参加企業の皆さまから今年1年間の取り組みや今後の課題などを発表いただきます。初参加の方も大歓迎ですので、お気軽に事務局までお問合せください。皆さまのお越しをお待ちしております。

 

文責:一般社団法人日本経営協会 寺田和紀 株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨