【第76回】女性と組織の活性化研究会レポート
『ダイバーシティ4年目に見えてきた課題』

 アベノミクス効果で、ここ1〜2年はダイバーシティ推進、特に女性活躍推進の機運が高まっています。当研究会には、3年以上ダイバーシティ推進に取り組んでいる企業が数多く登録されています。
今回の研究会は「ダイバーシティ4年目に見えてきた課題」をテーマに実施しました。ここ3年間を振り返り、効果のあがった取り組み、失敗してしまった取り組み、会社内の変化などを、参加企業メンバーで共有しました。
 概要は次のとおりです。

*第1部* 14:00〜15:30
・植田ミニ講義
・事例発表(質疑応答含む)
*第2部* 15:45〜17:00
・オブザーバーからのお知らせ
・グループディスカッション

当日は17社27名(オブザーバー含む)の方にご参加いただき、植田の講義、カルビー株式会社 佐藤さんの事例発表、そして第2部のグループディスカッションと、
本音ベースの対話が繰り広げられました。
 以下、今回の研究会の内容について、それぞれ一部分をご紹介します。

*主宰者によるミニ講義*
事前に集計した42社のアンケート回答では、ダイバーシティ推進、女性活躍推進に取り組み始めて3年以上と回答した企業は57%でした(3年以上〜5年未満33%、5年以上 24%)。推進しているメンバーの人数は、「2名以上の体制」と回答した企業が75%となり、担当者1名が四苦八苦している時代から変わってきたことがうかがえます。一方で、推進メンバーはまだまだ本業との兼任者が多く、推進が加速しない1つの要因ではないかと思いました。
また、会社として最終ゴールや目標があるかとの問いに、「漠然とある」と回答した企業が54%で、意外と女性管理職比率等の数値目標を明確に示している企業は少ない印象を受けました。
ここ3年間で失敗してしまった取り組みについて、男性社員や管理職に対する意識改革をあげる企業が何社かあり、男性へのアプローチの難しさを再認識しました。
 植田は、女性活躍推進、ダイバーシティ推進のゴール/目標とは、「全ての人たちが活き活きと働き続けていく組織にすること」であると定義。マズローの欲求段階説にあてはめながら解説していきました。あわせて、ゴールに向かうまでの指標・マイルストーンの設定例を紹介。
女性活躍推進は、組織風土を変えることなので試行錯誤があって当然。なかなかうまくいかなくても、継続することの大切さと、柔軟に変化していくことの重要性を訴えていました。

*ゲストによる事例発表*
 今回は、カルビー株式会社 人事総務本部 ダイバーシティ推進担当 佐藤さんより、『ダイバーシティ4年目に見えてきた課題』をテーマに事例発表をしていただきました。
 カルビーさまは、2009年に会長に就いた松本氏(元ジョンソン・エンド・ジョンソン社長)の強力なトップダウンのもと、ダイバーシティを積極的に推進されてきました。
従業員の男女比がほぼ半分なのに、当時女性管理職比率が5.9%だったことが、活動に本格的に取り組むきっかけとなったようです。
今回の発表では、2010年のダイバーシティ委員会発足から現在までの歩みと、これからの課題について、たっぷりとお話しいただきました。特に、2011年から取り組んでいるテーマ別の部会について、詳細に発表いただきましたので、以下3つご紹介したいと思います。
1つ目は、2011年から継続している「キャリア支援部会」です。主な活動には、「明日へつなげる自分のチカラ発見!」講座の開催、「きらり☆キャリア通信」の発行があるそうです。講座の参加者からは「目標が明確になった」との声が寄せられており、初年度から毎年継続して開催しています。2013年にはチカラ発見講座に“7つの習慣”を加え、男性も参加する講座になりました。月に1回発信している通信では、ロールモデルを紹介しているそうです。その他、トライアルでメンタリング制度を導入したり、会長との座談会を行い、その様子をイントラで報告したりと、6名の女性メンバーで様々な活動に取り組んでいるとのことでした。
2つ目は、2012年から活動しているセカンドドリーム部会です。部会でどのようなことに取り組んだらよいか、まずアンケートを取ったところ、「会社への恩返し」「スキルを継承したい」という声がある一方で、所得や自身の健康・介護などに対する不安の声もあったとのこと。活動の中で、「素敵なセカドリさん」をイントラで紹介したところ大反響だったというお話が印象に残りました。これから執行部門へは、キャリアアップ人財育成制度の導入や働き方セレクト制度、マイスター制度について提言していくとのことでした。
3つ目は、工場部会です。工場ではコミュニケーションの向上のため、意識して交流する場をつくるように心がけているそうです。また1人1台パソコンがある環境ではないため、掲示物(ポスター)、三角POP、掲示板など目に触れるものでダイバーシティをPRしているとのことでした。研究会メンバーのキユーピーさまとの交流会も行ったそうです。
 強力なトップダウンと、委員会メンバーによるボトムアップの継続的な活動により、3年間で女性管理職は3倍に増えています。そんなカルビーさまのこれからの課題について、最後に少し触れたいと思います。
 ダイバーシティは社員に浸透しているものの、関心への二極化も進んでいるそうです。なかなか自分ごとにならない人に対する情報発信への工夫が求められています。また、「ダイバーシティ=(イコール)女性優遇」といった声も聞かれるため、正しい理解の促進も必要です。
また、これからは管理職の参画による戦略的な活動にしていきたいとのことでした。管理職に目標をもってもらい、さらに推進を加速していきたいようです。
 政府の掲げる「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という目標、カルビーさまはきっとその前に達成しているだろうなと思いました。今後の活動にも注目していきたいです。
 佐藤さんの発表後、参加企業のみなさまからは多くの質問が寄せられました。カルビーさまの活動への関心の高さと、メンバーの本気度が伝わってくる、熱気溢れる空間となりました。
佐藤さん、素晴らしい発表をありがとうございました。

*グループディスカッション(東京)*
 今回は事例発表いただいた佐藤さんの他に、執行役員人事総務本部長(ダイバーシティ委員会委員長)江木忍さん、人事総務本部ライフキャリアプラン担当課長(次期ダイバーシティ委員会委員長)高橋文子さん、東日本事業本部人財開発課課長(兼ダイバーシティ委員会キャリア支援部会リーダー)新谷英子さん、総合企画本部カスタマーリレーション部(兼ダイバーシティ委員会セカンドドリーム部会リーダー)飛田幸枝さんも交え、佐藤さんと主宰者の植田を中心とする2つのグループに分かれてディスカッションが進みました。
 カルビー様では専任委員の佐藤さんを中心に、手挙げで集まったメンバーで全社を横断する形でダイバイーシティ委員会が運営されています。研究会に参加された皆さんからは、カルビー様で実施されている多くの活動に質問が相次ぎ、関心の強さが感じられました。女性社員が多く就業する工場部門をお持ちの企業からは、育休から戻った女性従業員で構成する”てづくりチーム”の発足した由来に関する質問があがりました。”てづくりチーム”は会社側が用意したのではなく、時短という働き方の中で、少しでも多く会社に貢献したいという女性従業員と、その思いを汲み取った本部長や工場長が作り上げたチームとのこと。また、45歳以上のシニア予備軍も含むシニアを対象としたセカンドドリームの会についても、多くの質問があがりました。この取り組みは、役職定年を迎える前に自分の働き方を見直す手助けとなったと共に、キャリアアップ人財育成制度、働き方セレクト制度、マイスター制度の検討などを通じて、ダイバーシティは女性活躍推進だけの為にあるのではない、ということを広く伝えることができたとのことでした。
 女性管理職の登用については、多くの企業が対象者の少なさと女性自身の意欲の育成が問題と感じており、見渡した時に管理職にあげたいと思える卵をどれだけ育てていけるかがキーとなるようです。また、登用するタイミングにおいては一人だけを登用するのではなく、複数人を同時に登用することにより成功したという企業様の事例も伺うことができました。

*グループディスカッション(関西)*
 関西のグループディスカッションには、カルビー(株)執行役員 中日本事業本部長の福山知子さんにもご参加いただき、前半の佐藤さんからの事例発表に引き続き、たいへん活発な意見交換や質疑応答が繰り広げられました。
 福山さんは現在、時短勤務を続けながら、中日本エリアの売り上げの責任を負う本部長を務めておられ、短い勤務時間の中でいかに高い成果をあげていくか、豊富な実体験をもとに熱く語っていただきました。部下である部長は全員男性で、ほぼ年上。限られた時間を有効に使うために、判断のスピードをあげ、コミュニケーションもメールより対面や電話を重視する――などの生々しいお話に、参加者の皆様も真剣に耳を傾けておられました。
 また、佐藤さんに対するご質問も、「担当者どうしの意識を合わせるにはどうすればいい?」「活動へのモチベーションを維持するのに何か秘訣は?」など、かなり具体的なものが飛び出し、ご参加のみなさまのダイバーシティ推進に対する熱意と本気度が伺えました。

次回の研究会は、「女性管理職育成を加速させるメンター制度」と題して、3月19日(水)に開催いたします。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。

文責:株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨、一般社団法人日本経営協会 寺田和紀、キャリアコンサルタント 山岡正子