女性管理職育成を加速させるメンター制度

77回となる研究会はゲストにキヤノン株式会社 人事企画部 鈴木麻子さんを迎え、「女性管理職育成を加速させるメンター制度」について事例発表をいただきました。参加者は2230名となり、1社から複数の部署から参加いだくなど、メンター制度に対する関心の高さが感じられました。研究会は、下記のように2部構成で進行致しました

*第1部*14001530

・植田ミニ講義

・事例発表(質疑応答含む)

*第2部*15451700

・グループディスカッション

以下、今回の研究会の内容をご紹介します。

*主催者によるミニ講義*

 今回のアンケートには39社の方からご回答いただきました。女性管理職、管理職候補に関する質問の中で、ロールモデルはいますか?という問いかけには、いる(15%)、少しいる(33%)の合計が48%とほぼ半数になってきたものの、あまりいない(31%)、いない(8%)の合計が39%となり、いない理由としては「女性管理職がほとんどいない」、「未婚または既婚で子供がいない」などがあげられました。メンターはいますか?という問いかけに対しては、いる(5%)、少しいる(13%)という結果となり、あまりいない(23%)、いない(33%)の合計が56%と半数以上を超えていました。ロールモデルについては各社での取り組みが進んできたものの、メンターについてはまだ理解が進んでおらず、会社としての制度がないため、個人で探しているという意見もございました。一方、女性管理職、管理職候補たちは、ロールモデルやメンターを求めていますか?という質問には、求めている(26%)、少し求めている(33%)を合計すると59%の皆さんが必要と感じている実情がわかりました。

 植田自身の取り組みとしても、組織力を高めることを目的としたメンター制度導入支援が進んできており、上司との縦関係や同僚との横関係とは異なり、斜めに引っ張りあげてくれるメンターとの関係は女性管理職育成においても大きな役割を果たしているとのこと。女性が一歩踏み出す勇気を後押しし、高い視点と広い視野を学び、キャリアの方向性が見えてくる。メンターがいなくても成長はできるが、メンターがいることにより成長速度が高まり、自立が進むと提言。事例発表の鈴木さんにバトンがわたされました。

*プレゼンテーション*

鈴木さんが勤務するキヤノン株式会社では、「共生」という理念のもと、「三自の精神」「実力主義」「国際人主義」「新家族主義」「健康第一主義」の5つが行動指針として掲げられ、1989年には女性の管理職が誕生していました。創業者の御手洗毅氏が産婦人科医だったこともあり、家族あっての仕事という当時の日本企業として先進的な考え方が社員に説かれ、ワーク・ライフ・バランスの取り組みについては、1959年にはGHQ運動(Go Home Quickly)が行われ、1967年には週休2日制度を導入されるなど、数々の経営革新を実践されてきました。その後もリフレッシュ休暇制度、育児休業制度、フリーバカンス制度など、女性だけではなく社員全体に対する取り組みが実施され、時間外労働時間の削減にも努めてこられたそうです。その結果として2010年からは育児休業取得者の復職率は100%が維持されていらっしゃいます。しかしながら、出産や育児を理由に退職する女性はほぼいないものの、女性管理職の比率は2012年時点で1.5%となり国内製造業の同比率と比較すると低い傾向にあったとのことでした。

そんな中、201210月にダイバーシティを推進する全社横断プロジェクトとして「VIVIDVital workforce and Value Innovation through Diversity が設置されました。女性活躍推進についてはロールモデル育成の環境整備と啓発活動を第1STEPの目的と捉え、数合わせのためにゲタをはかせるのではなく、組織のリーダーとなって、より責任の高い役割を担う女性社員を育成することを目的に研修フレームが構築されました。その研修の厳しさに負けないために「メンター制度」が導入され、上司とは異なる他部門の管理職が指導、相談役となりキャリア的機能 (仕事上の成功)と心理・社会的機能(人間性の向上)の両側面から、メンティの成長をサポートする取り組みが実施されました。メンティの募集には推薦だけではなく公募も設け、志が高い人材を発掘する良い機会となったという手応えが感じられたそうです。 また、メンターやメンティへの動機付けの取り組みとして植田も講演を行わせていただき、女性リーダー育成とメンタリングの意義に対する理解を深めていただくことができました。

メンター制度導入の効果としては、メンタリングチェーンで結ばれた人々が活き活きと活躍できる組織となってきていることが感じられるそうです。メンター制度が風土として定着しつつあり、今後の展開についてもぜひまたお伺いできればと思いました。

 

*グループディスカッション*

主宰者の植田と事例発表をしていただいた鈴木さんを囲む2つのグループで、グループディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。

 鈴木さんを囲むグループでは、2012年から毎年講師を替えて行っているメンター研修(女性リーダー研修)について、具体的な講師名などの突っ込んだ質問がありました。また、メンター・メンティの組み合わせに利用している「個人診断」に関する質問も寄せられました。新人や若手社員にメンター制度を導入している企業はあるものの、ロールモデルや女性リーダー育成を目的にメンター制度を導入している企業は少なく、みなさん興味深くメモをとっていました。その他、鈴木さんからは、うまくいった社内の取り組み「育児休業明け復職者とその上司参加イベント」について少しご紹介いただきました。

 植田を囲むグループでは、メンタリングとコーチングの違いを教えてほしいとの質問があがりました。社内でメンター研修導入の提言をした際に、コーチング研修をやっているから不要ではないかとの声があったそうです。コーチング研修では主にテクニックを学び、それらはモチベーション高く前向きに頑張ろうとしている人には有効に働きます。知識・テクニックは知っていた方がよいものかもしれません。ただ、悩みを抱えている人にはカウンセリング的アプローチ(傾聴)が必要になるため、メンター研修ではその両方をトレーニングすることを薦めていました。また、どんな人にメンターを付けるのがよいかという話の中で、女性のみならず転職者にメンターを付けるのもよいとアドバイスがありました。

 次回の研究会は、「女性活躍推進のための男性上司&女性部下ペア研修の効果」と題して、425日(金)に開催いたします。発表者も男女ペアで参加してくださいますので、両方の視点からお話が伺えそうで楽しみです。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。

 

文責:株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨、キャリアカウンセラー 山岡正子