ダイバーシティ 

〜障がい者、女性、外国籍社員が活躍する組織となるために〜

 

 今回は、女性活躍だけでなく、障がい者や外国籍の活躍も含めた本質的なダイバーシティに取り組んでいるYKK株式会社さんから、ダイバーシティ企画室長の倉本哲治さんにご登壇いただき、事例を発表してもらいました。

シニア層の人材マネジメントについて取り上げた、昨年11月の第73回研究会に続き、このようなテーマが登場することに、いよいよ日本のダイバーシティも新たなフェーズに入ってきたなと実感する回になりました。

新会場に移って2回目の研究会は、下記の2部構成で進行しました。

*第一部 14:0015:30

 ・植田ミニ講義

 ・事例発表(質疑応答含む)

*第二部 15:5017:00

 ・グループディスカッション(2セッション)

では、研究会の様子をダイジェストでお伝えします。

*主催者(植田)によるミニ講義

 今回、YKKの倉本さんが大変充実した資料をご準備くださったこともあり、ファシリテーター・植田からのミニ講義はいつもより短めに行われました。

 参加企業さまから事前にご協力いただいたアンケートによると、女性、シニア、障がい者、外国人など、これまで日本の会社組織ではマイノリティだった人々の雇用について、多くの企業が何らかの取り組みを行っており、課題を抱えつつも、それぞれの層において一定の成果がでている様子がうかがい知れました。ですが、どの層においても本番はこれから。今後施策を進めていくうえでのポイントを植田が端的に解説しました。

 ・女性活躍……管理職層における女性比率をその企業の女性従業員比率と同等にするぐらいの気持ちで取り組むべき。これが実現すれば、社会は確実に変わるはず。

 ・障がい者……どの企業も採用には力を入れているが、今後は、彼らにいかに活躍の場を作っていくのか?という視点を持ってほしい。

 ・シニア……これまでの女性活躍支援と同じでやはり制度から入っている印象。今後は、その制度を柔軟に用いて、事例をたくさん作っていく段階。

 ・外国人……彼らの雇用は現実的に不可避。今後、ほとんどの企業で課題になるうえ、女性やシニアの活躍推進よりハードルが高い課題になるはず。

 今後はすべての人が「どう働くか」を模索する時代。そんな時代を乗り切るために、例えば20代の独身社員や専業主婦の妻がいる男性社員など、今は何の制約もなく働くことができている人たちの意識をいかに高めていくのか、も重要な課題となりそうです。

*プレゼンテーション

 YKK株式会社と言えば、「ファスナー(ファスニング)の会社」、子会社のYKK APは「窓の会社」として広く知られています。また、工機技術本部が製品を作る機械を製造しており、世界での同一品質を保証しています。マザー工場のある富山県は、共働き世帯の多さ、働き続ける女性の多さでは全国的に有名な地域。待機児童数もゼロであり、家庭と仕事との両立体制が地域全体で整っています。女性やシニアのみならず、障がい者や外国籍の雇用・定着についてもさまざまな成果を上げられているのは、このような土地柄の影響も大きいのでしょう。

 YKKでダイバーシティ施策の産声が上がったのは1999年。「女性活性化委員会」が発足し女性活躍推進がはじまりました。その後、5年ごとに新しい施策を打ち出し、2009年より男女差別のない人材開発プログラムを開始。性別ではなく個々人の能力に応じて仕事が任せられるようになり、女性の海外赴任者も増加。男女ともに活躍する風土が醸成されたことで、いよいよ本当の意味でのダイバーシティが進められるようになっていきます。

 2011年に16名の女性で結成された「なでしこプロジェクト」が女性活躍推進を経営陣に提言し、それをきっかけに「女性」、「障がい者」、「外国籍」等の包括的なダイバーシティの企画・推進のための専任組織が設立されました。2013年には、倉本さんが室長を務めるダイバーシティ企画室、前年2012年には、グループ会社のYKK APでダイバーシティ推進室が発足。ですが、その前段階ですでに、1998年に障がい者雇用を促進するための特例子会社のYKK六甲株式会社が設立されていたり、外国籍社員の採用を増加すること、海外会社の社員の日本への赴任の機会を与えたり、定年退職廃止などを見据えた施策が行なわれています。

「社員に期待する姿」= 社員一人ひとりが自らの人生を自ら考え、そして行動する「森林集団」の実現。

「会社が目指すべき姿」=年齢・性別・学歴・国籍にとらわれない、役割を軸とした真に「公正」な人事制度の実現。これらを進めるための「働き方変革への挑戦プロジェクト」がスタートするなど、社内にはダイバーシティを進めるベースが十分にできあがってきていたようです。

ダイバーシティ企画室の施策の3本柱として、「ダイバーシティの啓蒙活動の推進⇒意識・知識の向上」、「社員の声を反映した施策の実施⇒ダイバーシティ企画委員会の活動等」 、「ダイバーシティを推進するための全社的な施策の実施⇒ポジティブアクション、採用・定着の推進等」を実施し、「全ての社員にとって働きやすい、活躍しやすい風土となり事業・会社の発展につながることを目指していうということです。女性活躍推進も、フォローアップが充実した「キャリアデザインを描くためのにじいろ研修」が新たに実施されました。また、「仕事と育児の両立支援セミナー」がトライアル実施されるなど、より現状に即した進化を続けています。今後、社外のパートナーも参加できることも検討されているようです。

 CSRとしての側面もある障がい者の雇用は、年間で2.04%を達成したということです。この15年間の取り組みによって、多様な人材の採用→組織・社員の活性化→新たな価値の創造→会社の発展・成長という、まさにダイバーシティが理想とする好循環が生まれているYKKは、YKK精神の「善の巡環」、経営理念の「更なるコーポレートバリューを求めて」、社員一人ひとりが大切にし実践する価値観「コアバリュー」も定着しています。

昨今、組織が用意する制度に甘える従業員の存在が議論を呼んでいますが、1人ひとりの個性、事情、属性、未来などに徹底的に配慮すれば、自ら生き方を選択できる自律した社員を増やすこともできるのだということを、YKKの事例は物語っているように感じられました。

*グループディスカッション*

今回は、事例発表者であるYKKの倉本さんのグループと主宰者の植田、YKKの田中さん、追分さんを囲む2つのグループで、グループディスカッションを行いました。

倉本さんの入ったグループでは、現在、障がい者推進の担当をされている参加者から、現状での雇用推進の難しさに関する声が出ていました。「雇用2.0%を目指しているが難しい。トップメッセージがいろいろな場面で出ているのがうらやましいですね」 倉本さんは、「ユニットごとの雇用目標なので、部署によって人数の偏りがあるのが事実ですが、トップや役員のメッセージの効果は大きく、今まで配置がされにくかった部署での雇用推進に実績がでてきました。」とおっしゃっていました。また、雇用率の推進においては社内報奨金制度や障がい者雇用調整金制度の組み合わせで推進を促す工夫をされているそうです。

後半、倉本さんと交代した追分さんは、子供の頃の体験から障がい者の孤独をなくしたいという強い思いをお持ちでした。倉本さんのサポートをするようになって、上司の理解もあり、業務としてではなく、改革したいという思いで取り組みができるのは楽しいと話されていたのが印象的でした。「周囲とうまくコミュニケーションが取れない方がいて、本人と周囲の両方から相談を受けている」という参加者に対して、追分さんは「障がいというのは『認識』に『障がい』がある状態だと思う。周囲の理解と環境の整備で『障がい』が『障がい』でなくなり、本人の能力が発揮されてるようになっていくんです。相手のことがわからないから一歩ひいてしまう、それが壁になってしまうんですね」と、障がいそのものへの理解を進めるために小冊子も有効かもしれないとおっしゃっていました。

植田からは、「女性も障がい者も担当者の熱い思いが大切。皆のためになるし共鳴してくれる人がいると信じ続けてやり続けることで進んでいく」とコメントがありました。

 次回の研究会は、「育児時短管理職だからこその仕事術!その活躍と周りへ好影響」と題して、620日(金)に開催いたします。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。

文責:ライター 阿部志保、キャリアコンサルタント 笹美紀