「育児時短管理職だからこその仕事術!その活躍と周りへの好影響」

 80回目となる今回は、育児短時間制度を取りながら管理職としてご活躍中のパナソニックエイジフリーショップス株式会社 生産性向上室兼ダイバーシティ推進室の小松多恵子さんに、時短管理職としてのご自身の経験をお話いただきました。

 今回から、開始時間を30分早めて1330スタートとなり、33名と多くの方々がご参加くださいました。当日はこちらの2部構成で行っています。

*第1部 13301510

 ・植田ミニ講義

 ・事例発表(質疑応答含む)

*第2部 15301640

 ・グループディスカッション(2セッション)

では、今回の研究会の内容をご紹介します。

*主催者によるミニ講義

 今回、アンケートには38社にご回答をいただきました。回答によると、育児時短勤務者はかなり多く、かつ増加しているけれど、時短勤務での管理職はまだまだ少ないようです。管理職一歩手前の主任層は多数いるとのことですから、彼女たちが働き続けられるように、これからの働き方を考える必要があることがわかります。

*育休、時短が当たり前の時代だからこそ、24時間働く企業風土との決別が重要→出産年齢が30代の今、40代はまだ子育てが終わっていない。育児とキャリアの充実期の重なりは当然のことで、優秀だった女性たちほど両立に葛藤している。男性管理職は既婚、女性管理職は未婚が当たり前という常識は非常識で、長時間労働が美徳という意識を変えて、魅力的な管理職を増やさなければ、だれも管理職になりたがらない。

*管理職の役割とは?→ダイバーシティ時代、管理職に求められているのは母性、母の愛情。部下を育て活かすために、部下への権限委譲(任せて見守る)が大切。

*育児時短管理職の存在が、組織を変える!→子どもを育てながら働くことは、優先順位が変わり働き方が変わる。後輩の2030代女性だけでなく、イクメン、介護者、シニアにとって働き方のロールモデルとなる。

 長時間労働で、部下を見張り、救急車のようにいつでも出動できる管理職は×。自分もイキイキ、部下もイキイキとさせる管理職がこれから求められるスタイルです。

*事例発表*

パナソニックエイジフリーショップス株式会社は、ベッドや車いすなど介護用具の販売・レンタルと福祉リフォームを中心として、全国の地域に密着したパナソニックエイジフリー介護チェーンを展開しています。正社員は378名の男女比は64、管理職の男女比は913539歳が約8割の組織です。

ダイバーシティへの取り組みは2009年にDREAMプロジェクトの第1期としてスタートしました。ダイバーシティの取り組みをまず女性から、という事で始めたプロジェクトですが、そもそも女性管理職を作るプロジェクトだったと、第1期からメンバーである小松さんは後で聞かされたそうです。同社では、「やる気UP+生産UP=組織の活性化」をスローガンに取り組んでいます。

小松さんは、旧松下電工(現パナソニック)に入社後30歳でパナソニックエイジフリーショップスへ異動となりました。35歳で1回目の産休・育休を取りましたが、当時を振り返って「私もほかの人から見たら、ぶら下がりに見えたかもしれない」と言います。自分の業務をこなすことで手いっぱいで周囲のサポートなどできない状況では仕事に対する満足度は低く、皆が終電まで働く中で時短で帰る自分は責められているような気がして肩身が狭かったそうです。そんなナーバスな時期に、会社が小松さんの評価を、時短を理由に下げなかったことが一つの自信になりました。

2回目の育休あけには、ダイバーシティの取り組みに参加し、モチベーション高く働いていた時期に東日本大震災がありました。この2週間後、管理職になるための研修のため大阪に行くことになっていましたが、この時期に子どもから離れて歩いて戻れない距離に行くことはできないと、この時は研修を辞退しました。43歳で課長に昇進しましたが、不利になる場合もあるが短時間勤務のまま試験を受けるかを確認されました。その時、自分は短時間勤務の中で昇進試験に声をかけられたのだからと、このまま受けることにしました。フルタイムに戻って受験することは、後輩にフルタイムでなければだめだという事例を作ることにもなるからです。課長就任後、3か月に手術で1か月休むことがありましたが、日々部下に仕事を任せてきたことでスムーズに仕事を進めることができました。

子育てをする中で意識が変わったと小松さんは言います。自分が産んだ子供でもこんなに違うのだから人と人との価値観が違うことは当たり前だと思ったのです。仕事で成果を高める中で皆が何を大切にしているかを知るために、チームで共通する価値観をワークで探って共有しました。面談では、本人がその仕事を本当にやりたいのかをしっかり聞いています。他チームへ送り出す場合もありますが、チームの出入りがあるのは当たり前で、メンバーの選択肢を増やすことが自分の仕事だと思っているのです。

また、時短勤務から得た「限られた時間の中で働く」という時間意識を皆に伝えることにしました。仕事1件当たりの時間を数値化して把握してもらう事は、抵抗もありましたが、聞き続けることで皆が意識をするようになり、さらに効率化にも繋がりました。仕事は常に見直しをして行くべきで、時間をかけるべきこと、やりたいこと、やめてもいいことを考えるためにも、見える化と話し合いが必要だという事です。

質疑応答では、「時短勤務でフォローをしてくれる人に負担をかけている。私がどう変わればよいかと思って聞くが、なかなか本音を言ってくれない」という質問に対し、「自分が本音を出さないと相手は出さない。自分がどうしたいかがはっきりしているか。自分は、『あなたはどうしたい?どう思っている?』と聞いて、黙っていたり、わからないというようであれば、『私はこう思っている』と伝えて、相手の反応から理解するようにしている。何度もトライして、聞き続け、一緒に考えようというスタンスをとるようにしている」と答えていました。諦めずに、コミュニケーションをとり続ける、小松さんのマネジメントの一端を見るような気がしました。

*グループディスカッション*

主宰者の植田とパナソニックエイジフリーショップス小松さんの部下の寺本さん、および発表者の小松さんと部下で時短勤務中の工藤さんを囲む2つのグループで、グループディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。

 今回のディスカッションでは、パナソニックエイジフリーショップスさまで正社員全員が使っている「ランクアップノート」について、参加者の関心が集中しました。ただ仕事の予定を書くだけであれば手帳でよいのですが、「何のためにその仕事をするか」を掘り下げて書くことで、仕事の無駄を省くことにつながり、本質を見る目が養われるので、個々の能力を伸ばす役割も担っているようです。また、上司部下間のみならず、他部署のメンバーでも自由にノートを見て情報共有ができるということで、組織の風通しの良さがうかがえました。

 小松さんへは、上司として部下のランクアップノートをどのように見ているか、との質問がありました。まずノートを見て仕事の進捗を確認、その他自分が指示した仕事のことをノートに書いているか、そもそもノートに必要なことがきちんと書けているか、書けていなければ適宜フォローするとのことでした。

 また後半では、小松さんから、限られた時間で管理職の業務をこなす上での工夫や心がけなどをさらに具体的に伝授いただきました。私が印象に残ったのは、「その会議、何のための会議?本当に自分が出なければいけないの?」という問いです。会議の目的を確認できないまま、事前の準備もせず何となく会議に臨んでしまうことはよくあります。終わった後で、本当に自分が出る必要があったのかと疑問に思う会議もあります。そうやって時間を無駄に使ってきてしまったことに気づかされるお話でした。「時間の長さではなく質の高さ」。育児時短管理職は、働くすべての人のロールモデルだと改めて実感しました。



 次回の研究会は、「ダイバーシティ時代、全員に必要な節目キャリア教育&キャリアカウンセリング」と題して、725日(金)に開催いたします。

たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。



文責:株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨、キャリアコンサルタント 笹美紀