「組織のトップに必須な母性パワー!女性委員長の『子育てと仕事』『人材育成』」

 ここ12年、当研究会では労働組合執行部メンバーの参加が増えています。男性社会のイメージが色濃く残る労働組合。企業の女性活躍に取り組む中で、まずは労働組合執行部の女性比率を上げることから着手する企業もあるようです。

今回の研究会は「組織のトップに必須な母性パワー!女性委員長の『子育てと仕事』『人材育成』」をテーマに実施しました。
概要は次のとおりです。

*第1部*13:30〜15:00
・植田ミニ講義
・事例発表(質疑応答含む)
*第2部*15:30〜16:30
・グループディスカッション 

 当日は1215名(オブザーバー含む)の方にご参加いただき、植田の講義、魚力労働組合 半澤さんの事例発表、そして第2部のグループディスカッションと、本音ベースの対話が繰り広げられました。

 以下、今回の研究会の内容について、それぞれ一部分をご紹介します。

 *主宰者によるミニ講義*

事前に集計した27社のアンケート回答では、人事・人材開発部門の部門長および労働組合の委員長ともに「既婚男性子供あり」と回答した企業が50%以上でした。また、労働組合執行部の男女比は「男性しかいない」「男性のほうが多い」をあわせて約70%となり、概ね予想通りの結果でした。ただ、労働組合執行部の人生状況については、「様々な人がいる」と回答した企業が44%となり、多様な人生背景の人が増えてきているのは良いことではないでしょうか。

人事・人材開発部門の体制における課題、問題の有無については、「ある」「少しある」をあわせて81%に上りました(ある 43%、少しある 38%)。具体的なコメントの中で「育てることよりも(自ら)育つことに重点を置いている点」という回答があり、「俺の背中を見て育て」という昭和的なやり方を象徴している言葉だと感じました。

 最後の設問で、自身の人生状況と女性活躍推進、ダイバーシティ推進の仕事・活動につながりを感じるかとの問いに、85%の方が「感じる」と回答しており、研究会登録メンバーがこの活動にやりがいをもって取り組んでいることを改めて実感しました。

 植田は、オールドキャリア時代とニューキャリア時代を比較し、人事・人材開発部門、労働組合の役割・ミッションの変化について言及。イキイキ働く、共鳴するといったキーワードを用いて解説していきました。あわせて、女性活躍推進、ダイバーシティ推進のトップキーパーソンの役割について説明。失敗・頓挫の原因はキーパーソン選びにあったこと、女性活躍推進を成功させるためには、7つの条件を満たすキーパーソンの存在が欠かせないと訴えました。

 *ゲストによる事例発表*

 今回は、魚力労働組合 中央執行委員長 半澤あゆみさんより、ご自身の経験談を中心に発表していただきました。

 まずは企業紹介から。株式会社魚力は、創業が昭和5年の歴史ある企業です。鮮魚や寿司の小売事業を中心に、飲食事業と、子会社では鮮魚等の卸売も行っているそうです。

60店舗のうち、駅ビルやスーパーに入っている魚屋(小売)が50店舗以上、寿司屋など飲食店舗が6つ、店舗のほとんどが関東地区にあります。

 発表者の半澤さんは、20代前半の頃は塾の講師と魚力のパートを掛け持ちして働いていたそうです。25歳のとき、キャリアについて立ち止まる出来事に遭遇します。塾からは正社員にならないかとの話、魚力では他の店舗への異動話。考えた結果、「魚力の社員になりたい」との結論に至り、そのことを会社に申し出て、パートから正社員に登用された初めての女性社員としてご活躍されてこられました。平成24年に労働組合の専従担当になるまでは、寿司屋でお寿司を握ることが主な業務だったというお話に、女性では珍しいのでは?と驚きました。また、組合の活動を行うにあたっては、初の試みとして専従協定を結び、組合3役も部分専従というかたちで活動に参加する形式をとっているとのこと。会社からは「寿司事業の拡大のため、会社に残って力を貸してほしい」と言われておられますが、「組合でどうしてもやりたいことがあるので」と強く言い切り、専従を認めてもらっているそうです。私はこのエピソードから、半澤さんの芯の強さとしなやかさ、仕事への情熱、会社への愛を感じました。

 半澤さんは、学生時代のアルバイト経験や多くの人との出会いが、働くことの根本、土台を作ったと感じているそうです。年齢も性別も関係ない中で働いたことで、学校では学べないことを学んだといいます。そして、魚力のパート社員時代は、夕方からの塾講師の仕事と掛け持ちで、退社時間を守ることが必須だったため、効率を大事に考えて働いていました。しかも、パートだからといって決して手を抜くことなく、全力で取り組んでいました。限られた時間でいかに生産性を高めるか―この経験は、子育て中に自然と活かせたのだと思います。

 子どもから教わったこととしては、「1つずつできるようになることの喜び」をあげていました。

できない事にイライラしたり、頭ごなしに叱ってはいけない。部下育成にも通じることです。子育ての経験は、究極のリーダーシップの学びであることを改めて感じました。

 労働組合の活動では、当初、月に1回の会議で話されている内容が何のためか分かりづらく、疑問だらけで質問ばかりしていたそうです。外部活動への参加もなかった様子。いまは執行部自体の意識改革に力を注いでいるとのことです。

最後に、半澤さんのやりたいこと、強い想いをご紹介します。

「働き方、働く時間の長さで人が評価されることのない会社にしたい。それまで辞められない」

 組合の執行部をファミリーだといい、個人のカラー(個性)を大切にしながら、相手に合わせて役割を与えている半澤さん。まさに母性あふれる素敵なリーダーです。人を育て、活かすことが求められるニューキャリア時代には、やはり半澤さんのような女性リーダーがもっと増える必要があると強く思いました。

 半澤さん、素晴らしい発表をありがとうございました。

 *グループディスカッション*

半澤さんのグループでは、3つの質問に対して講演の続きとなる更に深いお話を聞かせて頂きました。

まず、どのようなことをやりたいですか?という質問に、組織を拡大し組合員を増やしたい、という明確な思いを即答されました。パートさんを加えた組織力拡大が必須と考えていらっしゃること。そして協議をもって労使協約を増やし、働く人があっての会社にしていきたいと素晴らしい展望を語ってくださいました。

 また、組合員からくる相談が委員長に集まることで忙しいのでは?という質問に対して、

半澤さんの信念ともなるお話を伺うことが出来ました。

半澤さんは“忙しい”という言葉を言い続けていると誰も声をかけなくなるため意識して使っていないそうです。忙しい状態を作らないためには、“自分にしか出来ない”ことを減らし人に任せ、フォローをする、ことだそうです。そのフォローの言葉として心に響くお話ししてくださいました。

折れそうになった人には、「辞めたければ辞めればいい。でも私は見捨てないから」と、寄り添い続けることの大切さ、そしてそれを見事に実践され多くの人たちの心を繋いでいらっしゃいました。

最後に、フルタイムで働きながら子育てをしている方からの質問で、「時間で退社する際の引け目に対しどうすればプラスの気持ちに切り替えられますか」に対し、時間については割り切って考え、但し時間内の生産性を上げる仕事の仕方を考え定着化すること。それは子育てが終わってからも役立ちます、という実体験からのアドバイスを頂きました。組織にとってもいい影響力となっていくことでしょう。

植田の入ったグループでは、冒頭、研修では男性同士だと表面的な見方ばかりで違いを感じにくいが、女性が加わることで新たな気づきが得られることから、労組においても委員長に女性が加わることで、これまでの見方と違う視点が加わっている、というメッセージが皮切りとなりました。

女性の労働組合委員長について、加えて人事部へ向けても多様な意見交換がなされました。

育てる力が管理職の評価基準となれば、信頼関係がもて、コンプライアンス自体が必要なくなるのでは、といった育成の観点にも話が展開し、労組執行部での女性が少ない理由、など意見交換されました。

女性は年齢的にも労組執行部を経て、子育てと続き短期的な狭い視野での育成ととらえられがちですが、もっと長期的に考えることが必要、という意見や、また懇親会やゴルフといったつきあいの中でしか本音が語られない現状に、日常で本音を語ることができる女性執行部としてどう関わるか、という課題も上がりました。

その中でもやはり演者の半澤さんが語られたことは、労組委員長という立場のみならず、管理職としてもロールモデルとなる感動的な話しでした、と皆一致した感想で閉じられました。

 
 次回の研究会は、「高学歴リケジョ(理系女子)の夢と戸惑い!必要なのはロールモデルと上司の応援」と題して、11月5日(水)に開催いたします。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。

文責:株式会社日経BPマーケティング 神田絵梨 キャリアカウンセラー 朝妻綾子