「高学歴リケジョ(理系女子)の夢と戸惑い!必要なのはロールモデルと上司の応援」

 

 今回の研究会は「高学歴リケジョ(理系女子)の夢と戸惑い!必要なのはロールモデルと上司の応援」をテーマに実施しました。

概要は次のとおりです。

*第1部*13301500

・植田ミニ講義

・事例発表(質疑応答含む)

*第2部*15301630

・グループディスカッション

当日は2025名(オブザーバー含む)の方にご参加いただき、植田の講義、大日本住友製薬株式会社 本間さんの事例発表、そして第2部のグループディスカッションという形式で開催されました。

 以下、今回の研究会の内容について、それぞれ一部分をご紹介します。

*主宰者によるミニ講義*

事前に集計した34社のアンケート回答では、「割合的に理系女子の少ない会社が大半を占めるものの、その数は徐々に増えつつある」という傾向が読み取れました。

安倍総理の成長戦略にも盛り込まれている通り、「女性の活躍推進について、本腰を入れなければならない時代がやってきた」という認識は、各社とも共有しておられるようです。

理系女子のキャリアプラン(継続成長施策)についても、ある程度体制整備が整っている会社が多い一方で、肝心のロールモデルやメンターとなる先輩がいない、あるいは少ないといった状況が、アンケート結果から浮き彫りになりました。

 理系女子に限られた話ではないのかもしれませんが、昭和の時代、結婚・妊娠・出産・子育てといったライフイベントと『仕事』の両立というのは非常に困難であり、また会社側もそれを望んでいなかった節があります。『家庭』を選んだ女性は『仕事』を諦める、あるいはサポート役に回らざるを得なくなり、『仕事』を選んだ女性は猛烈な働きを求められた結果、ロールモデルが両極端化してしまったのではないでしょうか。

 植田は、オールドキャリア時代とニューキャリア時代を比較し、「女性にキャリアはいらない」と言われた過去の経験や、男性上司の本音(働く女性の応援はしたいが、産休や育休のことを考えると、男性部下のほうが扱いやすい等)を踏まえながら、上司との人間関係の重要性について言及しました。また、メンターについては、「自分で探すもの」としたうえで、自身のメンターである60代と80代の女性について語りました。

 

*ゲストによる事例発表*

今回は、大日本住友製薬株式会社 研究本部 研究管理部 人材企画グループ 本間真紀子さんより、ご自身の経験談を中心に研究本部での取り組みについて発表していただきました。2005年に大日本製薬と住友製薬の合併により誕生した大日本住友製薬社様は、循環器・糖尿病、精神神経系治療薬の開発に加え、最近はがん領域での新薬開発にも力を入れておられるそうです。

本間さんは、大卒の研究職(今は院卒のみ採用)ということで、入社当時は「とにかく仕事を辞めないで、長く会社に勤めてくれればいい」と言われたことが印象に残っているそうです。当時は出産を契機に、会社を辞める方もいらっしゃったそうですが、研究職の女性だと薬剤師の資格を持っている方も多く、「会社を辞めて、しっかり子育てをした後に薬剤師のパートタイマーとしてもう一度働こう」といったヤクジョ(薬学部卒の女性)特有の感覚もあったようです。最近の女性研究者の意向としては、「産休・育休を取るにしても、なるべく早く復帰したい。研究者として活躍して新薬創出に貢献したい」と考える方が多いそうです。現在、大日本住友製薬社では、女性研究者のうち43%が育児に携わっているそうです。また、社内でアンケートを取ったところ、「管理職になってもよい」と考える女性が約半数を占めたそうですが、不安要素として男女ともに経験不足や能力不足が上がる中、女性の場合はさらに「家庭との両立」がランクインしたそうです。この結果より、ロールモデルの必要性は強く感じているものの、元々女性が少ない部門ではロールモデルそのものの存在を見出すことが難しいという事情があるようです。本間さんは人材企画グループにおいて、そういった問題を解決するために、2012年度には上記『研究本部における意識調査』を実施、2013年度には『ダイバーシティ研修』、2014年度は『コミュニティづくり』を行うなど、長期的なビジョンに則って、研修等も工夫を凝らしながら、社員への意識付けを行ってきました。一例を挙げますと、管理職向けにはGM(グループ・マネージャー)研修を2日間で実施し、35歳までの若手女性に対してはキャリア研修1日コースを実施し、共に植田が講師として登壇させていただきました。受講生の方には多くの気づきを感じていただいたものの、運営面ではいくつか反省点もあり、色々と試行錯誤されながらさらなるブラッシュアップに励まれる姿勢に感銘を受けました。

最後に、コミュニティづくりにあたっては、まずは有志の小さいものから始めて、徐々に広げていくというスタンスをとろうとしておられるとの事でした。コミュニティづくりについては、同じように悩んでおられる参加者からの質問等もありましたが、着実に一歩一歩、先を見据えてプランを練っておられる本間さんの姿は、同じ悩みを共有する研究会メンバーにとっても大いに励みとなりました。

本間さん、素晴らしい発表をありがとうございました。

 

*グループディスカッション*

本間さんのグループでは、ロールモデル、コミュニティづくりに関して、参加された皆さんと活発なディスカッションが展開されました。ロールモデルについては、参加者から「自分の部署にロールモデルとなる女性がいる方は、自分の未来が見える安心感からか落ち着いて働いている印象があるが、一方で、人それぞれ目指す働き方が違うので、この人こそロールモデル!という女性を見つけるのは、なかなか難しい。」や「タイプが違うとイメージできないし、世代によって求めるロールモデルが違う。」などの意見が出ていました。また、「そもそも、現在働き続けている40代後半〜50代の女性管理職は仕事を優先してきた方が多く、結婚、子育てを両立したいと思うワーキングウーマンのロールモデルとはならず、ロールモデル候補になりそうな素敵なワーキングウーマンが社内に見当たらないのでどうすればいいか。」等の悩みも飛び出しました。ディスカッションの中で見えてきたのは、ロールモデルは必ずしも社内にいるとは限らず、社内にいないのであれば社外に出て先に進んでいる女性を見つけることも方法の一つではないかということ。また、ロールモデルに全てを求めるのではなく、自分の中で足りない部分や成長したい部分で優れている方をロールモデルとすると、性別を超えて考えることもできそうです。

本間さんがコミュニティづくりへの取り組みを始めたきっかけは、同じ技術職でも研究所が違うとお互いに知らない方が多く、より幅広い範囲でロールモデルを見つける場を作りたいと思ったからとのこと。皆さんに興味を持っていただけそうな話題を選び、先輩社員や管理職など近くで活躍している先輩方や、時には外部で活躍している女性も招いて活発なコミュニティを広めていきたいという思いを伝えていただけました。

 

植田の入ったグループでは、世代別(30代、40代、50代)の女性意識の差にスポットを当てた議論が始まりました。仕事だけを選択した50代、どちらかといえば家庭を優先した40代、どちらも両立させたい30代…一律に決めつける訳ではありませんが、傾向としては概ね合っているのではないかと思った次第です。また、研修については、典型的な失敗例として、『女性リーダー選抜研修』についての例が挙げられました。曰く、会社主導で限られた女性だけに声を掛けたがる人事(男性)が多いそうなのですが、「競争意識や自己顕示欲を煽るようなやり方は、男性に対しては有効でも女性に対しては一利なし」と一刀両断。研修タイトルについても、(『選抜』『ジャンプアップ』といった)お尻を叩くような名称ではなく、『エンカレッジ(応援)』に変更すべきだとの事。また、指名方式ではなく、手挙げ+上司の推薦くらいのやり方が、一番バランスが取れるそうです。加えて、長い間女性に勤めて貰うためには、男性上司の協力が必要不可欠となりますが、そのためにはまず、「働き続けて欲しい…」という思いを伝えることが大事だそうです。かといって、研修の冒頭に偉い人が演説をする必要はなく、良い研修というものは自然と口コミ等で広がるとの事。

コミュニティづくりに関しては、植田自身のコミュニティ(フィフティーミューズ:50代の女神)の会について紹介したうえで、定期的に集まり、継続することの重要性について述べました。

また、日本社会においては、男性上司が人事評価を『時間(ボリューム)』基準で行う習慣が抜け切れていないという問題点を併せて指摘しました。40代前後の女性は、時間的には男性ほど会社に残って仕事をすることができない状態で、今まで仕事を続けて来ました。本来であれば、仕事の『質(部下をどれだけ育てたか、短時間でどれだけ成果を上げたか等)』で測らなければいけない所を、別の尺度・基準で見られてしまった…という思いは、どうしても潜在意識下に残ります。その結果、仕事に対しては若干、自虐的な姿勢となり、セミナー等にも「参加します!」という手を挙げ辛い空気が漂います。かといって、1日の睡眠時間が5時間で、男性に伍して働く女性管理職が、理想のロールモデル…とはとても言えません。せっかく働くのだから、50代もいきいきと働きたい。当たり前のことを、当たり前に実践できる会社を目指していくんだという方向性が示されたところで、研究会は終わりの時刻を迎えました。

 

 次回の研究会は、「2014年度に実施した各社の施策発表」と題して、1217日(水)に開催いたします。たくさんの皆さまのお越しをお待ちしております。

文責:株式会社きんざい 西塚剛 キャリアカウンセラー 山岡正子