45歳以上企業戦士な男性幹部の変心こそが女性活躍推進のカギ」

2015年2回目となります2月の研究会は、216(月)に大阪、220日(金)に東京での開催となり、45歳以上企業戦士な男性幹部の変心こそが女性活躍推進のカギ」をテーマに、いずれの会場もオムロン株式会社、上村千絵氏にご登壇いただきました。11回関西研究会は、約9か月ぶりの開催となり、当日は、1114名の方々にご参加いただき、第87回を迎えました東京では、917名の方々に参加いただきました。オムロンの上村さんからは「男性幹部の意識を変える取り組み」について、社内での取り組み内容を発表していただきました。

 当日は、(1)植田によるミニ講義、(2)オムロン上村さんによるご発表 (3)グループディスカッション の3部構成で進行しました。以下、当日の様子を簡単に紹介させていただきます。

*植田によるミニ講義*

最初に、ファシリテーターの植田より、「今回のアンケート結果のまとめ」と、「男性幹部の意識に変化を与えるポイント」をレクチャーさせていただきました。今回のアンケートは、36社の方にご回答いただきました。アンケートの結果からは、男性管理職の中に、女性活躍推進・ダイバーシティ推進の必要性を理解し、積極的に行動している人は「まだまだ少数」であることが伺えました。男性管理職の「オールドキャリア度」を訊ねた質問では、「高い」「やや高い」を足すと75%という結果に。しかし、一部に「育児休暇から復帰する女性に対して、積極的なサポートをする男性上司が増えている」「男性管理職自身が育児休暇を取得したことで、そのチームでは男性でも育休を取るメンバーが増えた」など、ポジティブな声も聞かれ、少しずつでも、気持ちや行動に変化の見られる方も増えてきているようです。また、女性活躍推進に向けた研修・講演等の施策を、「男性だけ」を対象に実施したことがあるのは36%、「女性だけ」を対象に実施したことがあるのは78%、「男性・女性両方」を対象に実施したことがあるのは44%という結果に。しかしその後、意識や行動に変化が見られた割合は、男性より女性の方がかなり多いようで、女性の「変化する力」の高さが、改めて浮き彫りになりました。女性活躍推進は「組織風土改革」そのものです。経営陣、人材開発部門、管理職、男性社員、女性社員と、階層・役割・性別等に関係なく、すべての人が「自分ごと」として取り組むことが欠かせません。そしてそのためには、「企業戦士」である男性幹部が「変心」できるかどうかが、大きな鍵を握ります。そこで植田からは、男性幹部を変心させるためのポイントとして、「女性部下と一緒に」講演や研修を受講し、リラックスした状態で、本音で話し合える場をつくることがとても大切であるとお伝えさせていただきました。

*オムロン上村さんによる事例発表*

 次に、本日の事例ゲストであるオムロン上村さんより、男性幹部の意識を変える社内での取り組み事例についてご発表いただきました。ご発表は、主に「オムロンの企業概要」「上村さんご自身のキャリア」「オムロンにおけるダイバーシティ・女性活躍推進の意義」「現在の主な取り組み内容」の4つのパートに分けて行っていただきました。

(1)企業概要

オムロンは1933年に「立石電機製作所」として創業し、1990年「オムロン株式会社」に社名変更されました。その「オムロン」という社名は、創業地である京都の地名「御室(おむろ)」に由来しているそうです。従業員数は、国内で約12,000人、海外も含めると約36,000人になりグローバルで働くメンバーの方が多いようです。国内の従業員の男女比率は、だいたい「82」。一般の消費者には、健康器具が有名かもしれませんが、それは事業全体の10%ほどで、実は工場の自動化のための制御機器や家電・自動車用の部品の製造など、BtoBのビジネスが大半を占めるそうです。

(2)上村さんご自身のキャリア

上村さんは、オムロンに入社されてからこれまでの歩みを、ライフチャートにまとめて説明してくださいました。入社した当時は、結婚すれば自分も仕事を辞めるのだろうと思っていたそうですが、異動で部署が変わったタイミングでスイッチが入り、仕事がおもしろいと思ってのめり込むようになったそう。ただ、携帯電話ブームで電子部品の購買の仕事が忙しくなった時は「長時間労働は生産性が低く、効率が悪い」と、身を持って実感したそうです。また、今は2人のこどもを育てながら、オムロンのダイバーシティ推進のために働くワーキングマザーであり、まさに多様性にあふれたライフ・キャリアを歩んでおられます。

(3)オムロンにおけるダイバーシティ・女性活躍推進の意義

 オムロンでは「自分の価値観や考え方を有した多様な人財が個性や能力を発揮し活躍することが、会社と個人の双方の成長につながる」という意識のもとで、ダイバーシティ推進に取り組んでおられるそうです。社長の「多様なメンバーの前向きな葛藤が、新たな価値を生み出す」という掛け声のもと、現在では、ダイバーシティ推進を専門にする部署も立ち上がり、制度の整備、くるみんマークの取得、社内保育所の設立など、様々な施策を実行されています。しかし、肝心の働く女性への活躍に向けた「動機付け」が十分にできておらず、現在も、管理職に占める女性の比率は、なかなか目標に届いていないようです。 いろんな施策を実行してきたのに、なぜ女性活躍が思うように進まないのか…。上村さんたちは、それぞれの「目指しているイメージが異なっている」ことに原因があるのでは、と考えたそうです。「活躍」という言葉を聞くと、人によっては「海外出張をこなし、大きな会議でかっこよくプレゼンをする」と思う人もいれば「プライベートと仕事を両立させて、自分らしく働いている」と思う人もいるかもしれない。また、女性活躍の「必要性」についても「労働力人口が減るから、その補てんとして」と考える人もいれば、「色んな価値観を活かし、新たな価値を生むために」と考える人もいるかもしれない。 そこで、オムロンがダイバーシティ推進に取り組む意味と目指す姿について、定義をされたそうです。「私たちが目指すのは『100人=100色』」。誰もが輝ける会社になること。社員ひとりひとりが、自分のやりたいことを描ける会社になること。そして、志を持って準備を続ければ、ライフイベントを乗り越えて、女性も役員になれる会社になること。この姿を実現するために、「女性が活躍する組織=会社(経営・職場)の変革×女性自身の変革」と定め、会社は本気だというメッセージを感じてもらうために、数値目標を設定しているそうです。

(4)現在の主な取り組み内容

現在の全社的な取り組み内容は、主に次の3つだそうです。

★管理職向け:「コミュニケーション&コラボレーション」、ダイバーシティマネジメントやクロスカルチャの研修、また「360度フィードバック」の実施など

★女性社員向け:「女性社員向け講演会」と「対話」の実施、WILLSKIL育成・醸成のためのセミナー等への参加機会提供など

★全社員向け:理解促進のため、社内イントラネットに専用ページ設置など

女性社員向けの講演会では、上村さんの上司である浜田さんが、国内の各拠点を回り、受講者への期待を伝えると同時に、活躍に向けた動機づけと、気づきのきっかけの提供を行っているそうです。

また、2013年から、女性社員向け研修「OMRON WOMEN WILL研修」をスタート。管理職候補の女性社員が「WILL」「SKIL」「NETWORK」の獲得を目指し、ロジカルシンキング&ライティング、チームリーダーシップ、発想力・想像力など、管理職に必要な能力開発のための研修を行っているそうです。受講を通じて、受講者が大きく成長し、やってよかったと思っているそうですが、これは管理職一歩手前の研修であり、もっと下の世代の方への教育も考えていかなければならないと思っているところだそうです。そして、男性管理職向けの施策としては、植田に依頼を頂き、「女性の活躍が拓く会社の未来」と題して、各拠点にて研修を実施。本来は男性管理職のみの参加を予定していましたが、植田の取り計らいで、その場にいた女性社員のみなさんにも加わっていただきました。女性が加わることで雰囲気が柔らかくなり、安心・安全の場で本音を語っていただくことで本当の効果が期待できます。参加してくださった女性からは、次のような声が挙がっているそうです。「いつも笑顔で対応していますが、本心は戸惑っています」「不安・プレッシャーでいっぱいです」「誰にも相談できず、仕方ないとあきらめています」「もっと上司とコミュニケーションを取りたい、信頼関係を築きたい」等々。男性管理職のみなさんからは、次のような感想が聞こえてくるそうです。「目からうろこ、女性の活躍推進、めちゃくちゃ大事」「女性リーダーを育てる力が企業を強くする」「7つのリーダーシップを場面によって使い分けることが重要」「なんとなく実践していたが、意識して行動を変革していく」「女性部下を支えること=自分自身の成長に繋がる、自分事として取り組む」「女性の孤軍奮闘をいかに支えるか、真剣に考え行動を起こしていく」「女性車両に男性が乗っている例えが、胸にぐっときた」「女性リーダー像のイメージが変わった、自然体の女性リーダーに魅力を感じた」等々。男性を否定するのではなく、男性の力に女性ならではの力が加わると強い布になる、その女性ならではの力を引き出すのがみなさんの役割、という植田の語りかけは、男性管理職のみなさんの心に大きく響いていたそうです。男性管理職の変心に、この研修が大きく効果を発揮しているようなので、できれば全男性管理職に受けてもらい、これをきっかけに、ダイバーシティ推進の流れを加速させていきたい、という締め括りで、上村さんのご発表は終了となりました。

*グループディスカッション*

今回は、2つのグループに分かれて、グループディスカッションを行いました。植田の加わったグループでは、オムロンさんで実施している男性管理職研修のポイントや、植田が講師として感じていることなどに質問が集中しているようでした。また、世代による価値観の違い、男性管理職の意識を変えるためにどんなことをすればよいか、などについて、ざっくばらんな意見交換が行われました。一方、上村さんに加わっていただいたグループでは、男性管理職向け研修を企画する際に社内を説得するポイントや、女性社員向けのリーダー育成研修の効果などについて、質問が飛び交っているようでした。また、女性管理職比率の数値目標を定めるべきかどうかについては、意見が分かれたようで、それぞれの立場から、白熱した議論が行われていました。安心・安全の場で、本音で語り合えるのがこの研究会のいいところ。会が終了後も、しばらく会場から出られることなく、真剣に、かつ楽しそうに話し合いを続けられる方が多く、和やかな雰囲気で終了しました。

文責 日本経営協会 寺田和紀、キャリアカコンサルタント 山岡正子